近年、歯科クリニックを選ぶ際の情報収集の方法が多様化してきました。
特にInstagramやX（旧Twitter）などのSNSを使い、口コミや体験談の投稿を参考にする人が増えています。

そのような流れの中でも、未だに多くの人がGoogleやYahoo!などから特定のキーワードでクリニックを検索しており、その行動は変わっていません。
検索エンジンで「〇〇市 歯科クリニック」や「〇〇駅近く 歯医者」などと検索された時に、上位に表示されるクリニックのホームページは、多くのユーザーの目に触れることになります。

都市部を中心に、歯科クリニックの競争は年々激しさを増しています。
少しでも多くの方にクリニックの存在を知ってもらうためにも、ホームページの検索エンジン対策、いわゆるSEO（検索エンジン最適化）は、クリニックの集患戦略において欠かせない要素となっています。
そして、このSEOの手法も日々進化しているのです。

2023年現在、SEOにはどのような傾向があるのか？
そして歯科クリニックのホームページを上位表示させるためには、どういった戦略が必要なのか。
今回は、ここ最近のSEOトレンドを取り入れた歯科クリニックのホームページの最適化方法について、ポイントを解説していきます。

2023年知っておくべきSEO対策

インターネット検索エンジンは常に進化を続けています。
日本で一番使われている検索エンジンのGoogleは、ユーザーが求める情報を瞬時に提供するためのアルゴリズムを日々更新しています。
2023年8月現在のSEOのトレンドとして、必ず知っておくべき対策は次の3つです。

ユーザーエクスペリエンスの最適化

サイトを訪れた人が、快適に情報を得られるようにするための取り組みです。
具体的には、サイトがすばやく表示されることや、スマートフォンでも見やすいデザイン、直感的に操作できるメニュー構成などが求められます。

また、Googleが提唱している「Core Web Vitals（コアウェブバイタル）」という指標も覚えておきましょう。
これは、サイトがどれだけスムーズに動作するかを示すもので、ユーザーのストレスを減少させるための重要な要素となっています。

コンテンツの質の向上

過去のSEO対策では、特定のキーワードを多く含めることが重視されていましたが、今はその内容が本当にユーザーにとって有益かどうかが評価されるようになっています。

この背景には、Googleが「E-A-T」という基準を設けて、情報の専門性（Expertise）や権威性（Authoritativeness）、信頼性（Trustworthiness）を評価するようになったことがあります。

一般のユーザーが、検索結果からこれらのことを感じられるかという基準で、それが検索エンジンでの評価に影響しているのです。

上記の定義に加え、2022年12月には新たに経験（Experience）が追加され、「E-E-A-T」に改定されました。
これは、提供されたコンテンツが製品やサービスの実際の使用経験や、場所の訪問体験を反映しているかという点が評価の対象となります。
特定のトピックに関する実体験を持つ人によるコンテンツは、高く評価されることがあります。

ローカルSEOの強化

特定の地域やエリアに特化したSEO対策のことを指します。

都市部の歯科クリニックの場合、近隣の住民だけでなく、働いている人がターゲットになることもあります。
来院される患者さんの生活を想像し、所在地や営業時間、対応している診療内容、そして来院の決め手となるクリニックの優位性を明確に伝えましょう。

自院のホームページでは、地域に関連するキーワードを適切に使用しながら対策していきます。

歯科クリニックのホームページにおけるSEOの応用方法

ユーザーエクスペリエンスの最適化

Googleが提唱する「Core Web Vitals」という指標は、サイトの読み込み速度やインタラクティブ性、視覚的な安定性を測定するものです。
最近はリッチな表現をするWebサイトも増えてきている中、画像や動画の最適化、不要なJavaScriptの削減など、基本的なことではありますが、サイトのページの読み込みパフォーマンスにも配慮が必要です。

次に、スマートフォンやタブレットでの閲覧が増えていることに加え、デバイスの種類も多様化しています。
デバイスごとの表示を最適化するレスポンシブデザインは、もはや常識となっていますが、ユーザーにとって必要な情報がどのデバイスからでも見やすく、操作しやすいデザインである必要があります。
SEOの観点からは、見た目のカッコよさや見栄えの良さではなく、幅広く配慮が行き届いた設計がされていることが、良いサイトと評価されることは覚えておきたいポイントです。

歯科クリニックのホームページは、直感的なナビゲーションを意識すると良いでしょう。
他クリニックと比較したい患者さんが、診療時間やアクセス情報、治療内容や医師紹介など、知りたい情報へのアクセスを容易にするためのメニュー構成や、ナビゲーションの配置を考えて設計します。
歯科クリニックを探している患者さんの心理を汲み取り、迷わずにほしい情報にたどり着けるような構造にすることが大切です。

また、情報は多ければ良いというわけではありません。
たくさんの情報を掲載していたとしても、簡潔に伝わるタイトルをつける、箇条書きにしてまとめる、強調表示などの視覚的工夫で、患者さんが情報を精査しやすくなる工夫をしましょう。
治療の流れや設備の紹介など、図解やイラストを用いてわかりやすく伝えることも効果的です。

コンテンツの質の向上

患者さんは具体的な治療内容やその効果、期間、費用などを知りたいと思っています。
例えば、インプラントやホワイトニングなどの治療について、そのメリット・デメリット、治療の流れ、持続期間、アフターケアの方法など、患者さんが知りたい情報を先回りし、掲載することで好感を得られるのと同時に、クリニックに対する信頼感も高まります。

クリニックの治療方針を理解したとしても、患者さんは疑問や不安があるうちは足を運ぶことを躊躇します。
その点を解消するためにも、よくある質問（Q&A）は作成しましょう。
Q&Aは患者さんの不安な点を解消し、来院への後押しにもなり得ますし、クリニックの色や特徴も出やすいコンテンツです。
例えば、「初診の際に必要なものは？」や「治療中の痛みはあるの？」など、小さなことでも丁寧な回答を掲載することで、クリニックの姿勢も伝わります。

「E-E-A-T」を意識し、実際に自分が初めてクリニックを訪れ、治療をして帰るまでを想像できる程度に行き届いた情報が掲載されていると良いでしょう。
それはテキストだけでなく、医師やスタッフ、院内の写真など視覚的な情報も同様に必要です。

また、クリニックの情報だけにとどまらず、歯科に関する情報を定期的に発信することもオススメします。

治療に関することはもちろん、予防歯科に関する情報なども患者さんにとっては有益な情報となります。
日常のブラッシングの方法や、定期的なクリーニングの重要性、食生活のアドバイスなど、患者さんが日常生活で取り入れられる情報を提供することで、クリニックの価値を高めることができます。

ためになる、価値のある情報の提供はSEO評価にも良い影響をもたらします。

ローカルSEOの強化

競合の多い歯科クリニックでは、他院よりどれだけ多く自院の情報を露出できるかという点が勝負です。

特定の地域やエリアに特化した対策をいくつか挙げていきます。

Googleマイビジネスの最適化

Googleマイビジネスは、地域の検索結果に表示されるビジネス情報のページです。歯科クリニックの正確な住所、営業時間、連絡先、そして治療内容を更新し、定期的に新しい写真や投稿を追加することで、検索結果の上位に表示されやすくなります。
マップは検索結果1位のサイトよりも上位に表示されるため、ユーザーの目に留まる可能性が高まることは間違いありません。

口コミ・レビューの活用

治療後の患者さんに、Googleマイビジネスの口コミ・レビューの投稿をしてもらうことで、ホームページだけでは伝えきれない生の声を患者さんに知ってもらえます。また、良いレビューが増えることで、検索結果の順位にもポジティブな影響を与えることが期待できます。

地域名を含むキーワードの使用

ホームページのコンテンツやメタデータに、クリニックの所在地や近隣の地域名を含むキーワードを使用することで、その地域での検索において上位表示されやすくなります。例えば、「新宿 歯科クリニック」や「渋谷 矯正歯科」などのキーワードを適切に取り入れることが効果的です。

ローカルディレクトリへの掲載

地域に特化した情報サイトや専門の医療情報サイトにクリニックの情報を掲載することで、地域での認知度を上げるとともに、SEOにも寄与します。

地域に特化したコンテンツの作成

地域のイベントや地域の歯科に関するニュース、地域住民向けの予防歯科の情報など、地域に密着したコンテンツをブログやニュースページで定期的に更新することで、地域での認知度を上げることができます。

SEO対策の取り組み例

SEOは一度の取り組みで終わりではありません。

短期間で何かが大きく変わるということではなく、継続的に取り組むことでクリニックの信頼性が高まるのと同時に、新患の増加につながっていきます。
単純に検索結果の順位を上げる目的で行っていても、結果的には患者さんにとって良い情報を発信することになるので、そこでクリニックの信頼性も高まるのです。

行った対策に対し、得られる結果の例をいくつか紹介しましょう。

• カッコいい内装や設備を見せたくてサイトが表示される前に院内の動画を流していたが、静止画像に変えたらサイト直帰率が下がった
• ホームページで使用している画像をwebpに変えたら表示速度が改善され、サイト内の回遊率が上がった
• SNSで情報発信しているのでホームページでは必要ないと思っていたが、診療内容や料金なども掲載するようにしたら問い合わせが増えた
• Googleマイビジネスの情報を充実させ、最新の情報を掲載するようにしたら自院の表示回数が増え、そこからホームページへのアクセスが増えた
• 来院理由を聞くアンケートで「Googleの口コミを見て」という新規の患者さんが増えた
• ホームページで患者さん向けのコラムを定期的に更新するようになったら、サイトの滞在時間が延び、予約のコンバージョン率が上昇した

検索エンジンのアルゴリズムは常に更新されており、その変化に対応するための継続的な取り組みが必要です。
定期的なサイトの監視やキーワードの最適化、新しいコンテンツの追加など、日々の小さな努力が、長期的な成功に繋がります。

特に歯科クリニックのような地域密着型のビジネスでは、地域のニーズに合わせた最適化が求められます。

まとめ

近年のデジタル化の波は、歯科クリニックの経営にも大きな影響をもたらしています。

特に、ウェブ上での情報発信や集客の重要性は日増しに高まっており、これからのクリニック経営において、適切なWeb戦略の知識を持つことは必須となっています。

SEOはその中でも中心的な役割を果たしており、検索エンジンを通じての集患やブランディング、そして患者さんとの信頼関係の構築に直結する要素です。
そして、SEOの手法やトレンドは常に変わっているため、継続的な学びとアップデートが求められることも忘れてはいけません。

これからの歯科クリニックのWeb戦略において、単に上位表示を目指すだけでなく、患者さんの真のニーズに応え、高品質な情報やサービスを提供することが重要です。
そのための最適な手法として、SEOの持つポテンシャルを最大限に活用していくことが、クリニックの成功への鍵となるでしょう。